Ph.D.企業研究者の思考貯蔵庫

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【1報1,000万円?】修士で論文を書くメリット

先の記事では、僕の修士時代の体験を書きました。僕は、修士で論文を一報書いたことによって、その後の博士課程まである程度順調に過ごすことができました。

 

rhizobium.hatenablog.com

 

 ということで、この記事では、論文を書いて良かったことをまとめようかと思います。

 

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目次

 

 修士で論文を書くことが、どれほど研究者に良いことをもたらすでしょうか?僕の経験をもとにまとめてみました。結構いいこと尽くしです。

 

1. 研究の能力が格段にレベルアップ

 論文を書くことってなかなか大変です。特に、1報目を筆頭著者としてまとめ上げることは、胃が痛くなるほどの作業です。初めてのことだらけです。

 逆に言うと、それだけスキルが身につきます。どんなスキルが身につくかというと、

 

・論文での主張を論理の破綻がないように述べる。

・長文で英語を書く。

・論文用の図表を作る。

・Abstract, Introduction, Materials & Methods, Results, Discussion, Reference, Supplemental Informationなどの論文構成を構築する。

・論文の細かいルールや投稿規定を知る。

・Referenceの入れ方を知る。

・ResultとDiscussionの違いを知る。

・著者の順番に配慮する。

・データを機関にアップロードする。

などなど、まだまだあります。

 

 思いついただけでも大量です。これは、論文を100報読んでも身につきません。1報書いて初めて身につくことです。

 百考は一行に如かず。

なのです。

 

 そして、論文を書いて、これらのスキルを身に着けた研究者は、2つのことが変わります。

① 研究のデザイン力が格段にレベルアップ

 論文を書くためには、どういう研究デザインで、どういう実験をすればよいのかを考える力が格段に上がります。訳も分からずいろんな実験をやってみる、という効率の悪い仕事の仕方から離れ、明確な研究戦略に則って実験をできるようになります。

 論文を一報かいて、やっと研究者の仲間入りです。

 

②論文を読む力がアップ

 一報論文を書くと、他人の論文に対する見方が変わります。この論文はここがすごい、とか、ここはちょっと怪しい、とか、この実験大変だったんだろうな、とかまで読み取れるようになります。自分がしんどい思いをして書いた分、他人の研究デザインについて評価する目を手に入れます。

 

③研究者の感覚がつかめる

  どれくらいの期間で、どういう実験で論文が書けるのかをある程度見積もれるようになります。特に博士課程に進学するなら、論文が3報必要になるので、とっても大事な感覚です。あとどれくらいで卒業できそうか、という距離を予測することができます。

 

2. 周囲からの評価がアップ

 研究能力だけではなく、評価のアップします。教授や先輩から見たら、「あいつもようやく研究者の仲間入りをしたな」という評価になります。より良い研究を任されたり、テーマ提案させてもらったり、研究室での発言力アップなどが見込めます。

 また、学会などでも、ポスターに自分の論文を引用することで、「若いながらちゃんと論文を書いてる」という、ちょっとした信用を貰えます。それを足掛かりに同じ分野の研究者と仲良くなることも可能。

 

3. 自信がアップ

 「論文を一報書いた」という自信は大切です。これを積み重ねていけば、博士号もとれる、という自信が身につきます。博士課程への進学も選択肢に入るかと思います

 博士課程の進学が選択肢になったら、こちらのブログもお読みください。

 rhizobium.hatenablog.com

 

4. 論文1報1000万円

 修士で論文を持っておくと、奨学金免除と、研究資金の採択率が大幅にアップします。

 例えば、日本学生支援機構の第一種奨学金は「特に優れた業績による返還免除」という制度があります。

特に優れた業績による返還免除 - JASSO

 僕はこの制度で、8.8万円*24か月 = 2,112,000円が返還免除になりました。こんな大金を頂けるなんて、素晴らしい制度です。200万のために研究を頑張る、というモチベーションにもつながります。

 もし、M2の5月までに論文を書け、博士課程に進むなら、日本学術振興会のDC1という制度への採択率が大幅にアップします。筆頭著者の論文を持っている人は、採択率がほぼ10割だと思います。論文を持っていて落ちた人をみたことがありません。(もちろん申請書がよっぽどひどい場合は例外です。)

 そうすると、240万*3年 = 720万 + 研究費が年100万くらいつきます。

なんと、修士の間に論文を書くだけで、

 約1000万円の資金獲得をほぼ確実にする

ことができます。

 

 

5. その他もろもろ

 その他、人それぞれですが、メリットがあったりします。

 私は論文を書いたおかげで、読者から質問が来て、なぜか流れで飲みに行くことになりました。しかも素敵な女性から( ´∀` )

 この辺は「論文を書いたらナンパされた話」という記事をそのうち書きます。

 

6. まとめ

 修士のうちに論文を書いておけば、

・研究能力が格段にアップし、

・周りからの評価が上がり、

・自分に自信が持て、

・1000万円超の資金を獲得でき、

・女性にナンパされる

 というイベントが起こります。

 

めっちゃ胡散臭い三流雑誌の裏チラシみたいな宣伝ですね。でも僕の身にはそんなことが起こりました。

 

でも、十分なインセンティブでしょ?

死ぬほど頑張って論文書いてみない??